パレルモとマフィア | 反マフィアの英雄ファルコーネの暗殺ーStrage di Capaci カパーチの虐殺

05/27/2022

1992年5月23日 17:58。

それは、パレルモと市内を結ぶ高速道路A29のカパーチ付近で、ジョバンニ・ファルコーネ判事の車列が爆撃された日時です。

シチリアマフィア「コーザ・ノーストラ」に勇敢に立ち向かい、戦い続けた反マフィアの英雄が暗殺された「Strage di Capaci カパーチの虐殺」についてご紹介します。

この事件は、市民のマフィアへの関わり方を変えたきっかけにもなりました。命日である5月23日はメモリアルデーとして、毎年パレルモで大きなイベントが開催されています。

ジョバンニ・ファルコーネ判事とマフィア大裁判

ジョバンニ・ファルコーネ判事(magistrato)は、朋友パオロ・ボルセッリーノ判事と共に、シチリアのマフィア「コーザ・ノーストラ」組織撲滅を邁進していた人。

ファルコーネ判事とボルセッリーノ判事の有名な写真。ポスターや切手、記念コインにもなっている

多くの判事や裁判官、警察官等がマフィアによって暗殺されまくっていた1980年代に、ひるむことなく、複雑なマフィア組織の仕組み、特に政治家や財界人との関わりの解明に尽力してきました。

1986年2月に、475名のマフィアを同時に裁判にかけた世紀の大裁判「マキシ・プロチェッソ」をスタート。1991年1月31日に、トータル2665年の懲役(19名の無期懲役を含む)の判決を勝ち取りました。

実行犯はコーザ・ノーストラの大ボス、トト・リーナの右腕

1991年秋に開催されたシチリアマフィア「コーザ・ノーストラ」の大ボス会議コルレオーネのボス、トト・リーナや、トラパニのボス、マッテオ・メッシーナ・デナーロなど、シチリア島全体のボスマフィアが集った定例会)で、すでにファルコーネ・ボルセッリーノ両氏の暗殺計画は議題の中心になってはいましたが、具体的な実行のきっかけとなったのは、マキシ・プロチェッソでの判決。

トト・リーナ率いるコルレオネーゼの中でも、とりわけ残虐なキラーとして知られる狂人ブルスカが、暗殺コーディネーターとなり、計画が実行に移されました。

1992年5月23日の爆破計画

数ヶ月に及ぶ綿密な計画から、選ばれた場所はパレルモの隣町カパーチ

空港からパレルモ市内に向かう高速道路が通る海沿いの町で、当時、ローマ勤務だったファルコーネ判事が週末に戻るタイミングを狙って爆破する計画でした。

地下通路に仕掛けられた爆弾は、TNT、RDX、硝酸アンモニウムのオリジナルミックス。TNT爆弾500kgに相当する破壊力があったと言われます。

二つの塔が爆発地点。現在は記念碑が立つ。奥の山の斜面からリモコンを操作した

爆破スイッチは遠隔で操作されるため、いつも時速130kmで走る車にタイミングを合わせて爆破スイッチを押すポイントに冷蔵庫を置いた、と言われます。それほどの詳細計画でしたが…。

そして、ファルコーネ判事の死亡

しかし、この日はいつもの運転手に変わリ、空港からファルコーネ自身が運転。

時速90kmで走行していたため、爆破のタイミングがずれ、前方を走る護衛車に直撃。ファルコーネ判事の車は、その爆破衝撃でめくれ上がったアスファルトに激突し、運転席と助手席にいた判事と夫人は、フロントガラスに頭を打ちつけ、救急搬送されるもこの日の夜、帰らぬ人となったのです。

後ろの席に座っていた運転手が助かるという皮肉な結果に…。

※運転手の証言もまた別途ご紹介します!

カテドラーレでの葬列で語られた言葉

随行していた警察官3名(アントニーノ・モンティナーロ、ヴィート・スキファー二、ロッコ・ディチッロ) 、そしてジョバンニ・ファルコーネと夫人フランチェスカ・モルヴィッロの5名が死亡、23名の負傷者を出した大惨劇「Strage di Capaci カパーチの虐殺」。

ヴィート・スキファー二の未亡人であるロザリア・コスタが、全国放送されたカテドラーレでの合同葬儀で語った言葉。それは、人々の心を変えるきっかけとなったと言います。

シチリアの光と影……レティツィア・バッタリアが撮影したロザリアさん

「彼らを許します。でも彼らは跪き、変わる勇気を持てるなら。しかし、彼ら変わらない。変わらないでしょう。どうか、血塗られたパレルモの街を平和、正義、そして愛のある街に変えてください。」

泣きながら訴えるロサリアさんに、大きな拍手が湧き上がった印象的なシーンは、今見ても心を打たれます(Youtubeにあります)。

一般市民が公の場でマフィアに言及したのは初めてのことでもあり、それまで、見ざる聞かざる言わざる…マフィアに対して沈黙を続けてきたパレルモ市民、シチリア、そしてイタリアの人々の心に深く刺さったのでした。

パレルモは反マフィアの街に

沈黙は賛同してるのと同じ…。この日から、パレルモは反マフィアの街として大きく動き出します。

ファルコーネ判事の住居前の「ファルコーネの木」には、反マフィア、英雄への感謝のメッセージが。幼稚園の遠足などでも訪れる

反マフィア運動が大きくなると共に、マフィアは地下へ。今はもう、かつてのような”血塗られた街”ではなくなりました。

5月23日は、パレルモにとって忘れてはならない日。毎年、若者を中心に大きなイベントが開催されています。

2022年5月23日は、節目となる30年目

いつも以上の大イベントとなりました。

▼2022年5月23日の模様はこちら。マッタレッラ大統領の演説ほか、当日のパレルモ各地の動画をご紹介しています。

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